自分が介護の仕事に就いていた場合、その事を周りに話すと、大半の方に「大変な仕事ですね」と言われるようです。介護の仕事は、大変な身体介護のイメージが強いせいかと思います。確かに、身体を自ら動かすことの出来ないお年寄りを車いすに乗せたり、おむつ交換などの排泄介助や入浴介助は大変です。友人が介護の仕事を始めたばかりの頃は、力任せに身体介護をしてしまい、次の日には筋肉痛になったり腰痛になったりしたと言っていました。また、一緒に働いていた先輩職員が、体力の限界を覚えて辞めて行く姿も見たそうです。介護を勉強すると理解できますが、力に任せた介護は介護者の身体を壊すばかりですので、ボディメカニクスという介護技術を用いたり、介護用品を上手に使う事で、身体を壊さず介護に携われるのです。
また、ほとんどが高齢者ですので、怒りっぽい方や精神疾患を患う方、悩んでいたり、寂しがる方など、様々な高齢者と関わっていかなくてはなりません。その為に、ストレスを感じることもあるようです。しかし、介護の仕事を経験していく内に、その大変さ以上に、介護から学ぶ事が増えていき、やりがいも見つかるようです。
どんな仕事であれ、感謝される事をやりがいに感じる事ができれば、仕事の醍醐味は違ってくると思います。そう考えると、介護福祉士の仕事は、大いに誰かの為に役立っている事を感じられる仕事ではないでしょうか。介護職は、よくありがとうと言われたり、頭を深々と下げられたりする事があるようです。もちろん、誰もがありがとうと感謝するわけではありませんし、見返りを考えて働く必要はありません。しかし、本当に困っている人のために自分が役に立っていると感じられた時に、福祉・介護の仕事をこれからも続けて行こうと思えるのです。
ここでは介護福祉士をしている友人の実例を紹介します。
90歳になる高齢の男性利用者さんがデイケアへやってきました。しかし、初日はデイケアにも職員にも慣れず、食事も摂らず、話しかけても無言で過ごしたそうです。確かに認知症もあったので仕方ないと思っていたようですが、次のデイケアでも、食事をどうしても摂りたがらないのです。友人の介護士は、根気強く食事の介助をしていましたが、ある日、その利用者さんはいきなり怒りだし、彼女の手をかじってしまいました。酷い傷にはなりませんでしたが、送迎の際に家族の方にその事実を報告したところ、自宅でも頑固で家族が困っていると言っていたそうです。
次のデイケアでも食事介助を担当したところ、初めは同じく無言で食事を拒否していたのですが、ぽつりと「あんたは親切だな」と言いはじめ、食事に口をつけてくれたそうです。また、笑顔で介助しているとその利用者さんも次第に笑顔を見せるようになったそうです。その日の送迎の際に、ご家族にその旨を報告すると、そこまで良くして下さったのですねと泣きながら感謝されたそうです。
友人は、「誰だって機嫌を損ねるし、食事したくない時だってある。でも、根気強く接する事で分かってくれるし、家族の方にも感謝された。こんなに感動できる仕事は無いと思う。」と言っていました。この様な事がやりがいに繋がっているようです。